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概要


てんかんの病根を狙い撃ち!後遺障害リスクの少ない根治療法を確立

 大脳では、140億個もの神経細胞が複雑に結合し、ネットワークを構成しており、感覚情報や運動情報を電気信号として伝達・処理しています。正常な脳の活動の場合は、この電気信号は適度な大きさのパルス(脈波)ですが、ある原因によって、ネットワークの一部でこのパルスが大きな振動現象に成長してしまい、それが周囲に広がってしまうことがあります。これは、広い会場でマイクを使用するときに、アンプの増幅度を上げすぎると、発振現象(ハウリング)が起こり、会場全体に大きな音を発生してしまうので、全くアンプとしての機能を果たせなくなるのに似ています。つまり、本来、適度な大きさのパルスを伝達・処理していた脳の一部で電気的振動現象が発生し、それが波紋のように脳の広い領域まで伝搬拡大し、知覚機能、運動機能、記憶機能、学習機能などあらゆる脳の機能が阻害され、正常な行動や感覚・思考ができなくなって意識不明になり、倒れてしまいます。これが「てんかん」です。「てんかん」が起こると、転倒の際に頭を打って大怪我をしたり、風呂場で溺れ死んだり、運転中であれば交通事故を起こしたり、正常な場合には思いもよらないような生命の危険にさらされることになります。

 この「てんかん」の発生源(これを「てんかん原性域」といいます)は、切除してしまえば、「てんかん」は全く発生しなくなります。この「てんかん原性域」は、発生直後は小さなものと推測されますが、現在の医学では、これを正確に突き止めることができません。したがって、命にかかわるがん細胞の摘出の場合と同じように、少し余裕をみて広めに切除しなければなりません。そうすると、健常な脳まで切除してしまうので、感覚障害、視野障害、記憶障害、運動機能障害などの後遺障害が発生し、「てんかん」は生じなくなる反面、日常生活に支障が出てきます。

 そこで、本研究では、「てんかん」発作が生じる前に、頭蓋骨を貫通する小さな電極を数本セットしておき、「てんかん」が生じたときの電気的振動現象の広がり方を計測します。このデータをもとに「てんかん」原性域を突き止める方法を考案し、さらにその微小な原性域のみを、直径1㎜以下の細い冷凍マイクロプローブで瞬間冷凍融解するか、あるいは直径1㎜以下のグラスファイバーを通してレーザー光で焼いてしまいます。こうすることによって、周囲の正常な神経細胞のネットワークにダメージを与えることなく、「てんかん」原性域のみを破壊し、その破壊された部分は数週間もすると周りの組織に養分として吸収されてしまいます。

 このように、後遺障害リスクの少ない、しかも低侵襲(脳や頭蓋骨に大きな傷をつけない)の手術で、「てんかん」を根治できる夢のような治療法を確立することが、私たちに与えられたミッションです。現在、日本国内に25万人といわれる難治てんかん患者の皆さんの人生を取り戻すための技術を4年以内に確立できるように、私たちは日夜、頑張っています。

キーワード


てんかん原性域

臨床的に「てんかん発作」を呈するのに必要で、かつその切除によって発作を抑止できる領域。


難治てんかん

「てんかん」治療の原則は抗てんかん薬による薬物治療であるが、薬物治療を尽くしても「てんかん」発作が続く場合を「難治てんかん」という。

概 要

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