筋骨格ロボットアームの開発

ヒトの筋骨格構造は非常に複雑で,工学的には一見,制御がしにくくなるなどの問題にしかならないようにも見えます. この研究では,「ヒトの複雑な筋骨格構造にはヒトの優れた運動能力を実現するための大きな利点を生み出している」という考えのもと, 特にヒトの腕に注目し,その複雑な構造が持つ特性を可能な限り反映したロボットアームを開発し,実際にヒトが行っているさまざまな動作をロボットアームに行わせることで, その未知の利点の解明と工学的応用を目指しています.

Reference

  • Arne Hitzmann, Hiroaki Masuda, Shuhei ikemoto, and Koh Hosoda, "Anthropomorphic Musculoskeletal ten degrees-of-freedom Robot Arm driven by Pneumatic Artificial Muscles", Advanced Robotics, Vol. 32, Issue 15, pp. 865-878, 2018.
  • Koh Hosoda, Shunsuke Sekimoto, Yoichi Nishigori, Shinya Takamuku, and Shuhei Ikemoto, "Anthropomorphic Muscular-Skeletal Robotic Upper Limb For Understanding Embodied Intelligence", Advanced Robotics, Vol. 26, No. 7, pp. 729-744, 2012.

空気圧人工筋の柔軟性を利用したドア開け動作

私たちがドアを開ける時,ドアノブの位置を寸分の狂いも無く計測したり,ドアノブやドア本体がどの軸を中心に回転するのか精確に認識したりするでしょうか? 少なくとも意識できる範囲では,ある意味”適当に”ドアノブに手をぶつけるようにして手を移動させてドアノブを掴み,手ごたえのまま”適当に”ドアノブを回し, "適当に"ドア本体を押したり引いたりしているように思えます.この研究では,ヒトの筋肉のように柔軟な空気圧人工筋で駆動される筋骨格ロボットを用いれば, 非常に単純な制御でも,ヒトのように自然な動きでドア開けを行えることを示しました.また,各空気圧人工筋の圧力や張力のデータに「ドアノブが上手くつかめたか?」や 「ドアに鍵がかかっているか否か?」といった情報が含まれることを確認しました.

Reference

  • Koh Hosoda, Shunsuke Sekimoto, Yoichi Nishigori, Shinya Takamuku, and Shuhei Ikemoto, "Anthropomorphic Muscular-Skeletal Robotic Upper Limb For Understanding Embodied Intelligence", Advanced Robotics, Vol. 26, No. 7, pp. 729-744, 2012.
  • Shuhei Ikemoto, Yoichi Nishigori, and Koh Hosoda, "Advantages of flexible musculoskeletal robot structure in sensory acquisition", Artificial Life and Robotics, Vol. 17, No. 1, pp. 63-69, 2012.

ヒト規範型の肩複合体構造を持つ筋骨格ロボットアームによる投球動作

ヒトの腕の中でも肩は特に複雑な構造を持っています.この研究では,ヒトの肩を構成する複数の骨や筋肉を可能な限り再現するため, 従来よりも大幅に可動域を増加させた球面ジョイントや曲面上を滑るように移動する肩甲骨のメカニズムを提案し, それによってヒトのように広い可動域と優れた運動性能を実現しました.その結果,肩の働きが重要になる典型的な運動の一つである投球動作を実現し, 各人工筋の駆動パタンによって各筋,各関節の協調関係が制御できることを示しました.

Reference

  • Shuhei Ikemoto, Yuya Kimoto, and Koh Hosoda, "Shoulder Complex Linkage Mechanism for Humanlike Musculoskeletal Robot Arms", Bioinspiration & Biomimetics, Vol. 10, No. 6, doi: 10.1088/1748-3190/10/6/066009, 2015.
  • Shuhei Ikemoto, Yuya Kimoto and Koh Hosoda, "Surface EMG-based Posture Control of Shoulder Complex Linkage Mechanism", IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, 2015.
  • Shuhei Ikemoto, Fumiya Kannou and Koh Hosoda, "Humanlike shoulder complex for musculoskeletal robot arms", IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, 2012.

空気圧人工筋の解析的モデルに基づく単純な直接教示手法

直接教示とは,教示者がロボットに実際に触れて動かすことで,目的の動作を教示する手法です. 通常であれば,各関節の角度あるいは各筋の長さを各時刻で計測し,それらを目標値として角度フィードバック制御器や筋の長さのフィードバック制御器に入力することで実現できるのですが, 私たちが開発している筋骨格ロボットアームでは,3自由度球面ジョイントや2自由度楕円ジョイント,曲面上をスライドする肩甲骨メカニズムを持つため,角度の計測が困難であり, 人工筋が骨や関節に巻きつくように配置されていることから,長さの計測も困難です. この研究では,教示時における各人工筋の圧力と張力を計測し,各筋の長さの計測やモデルに基づく推定を経ることなく,その動作を単独で再現するための圧力と張力の関係を導く手法を提案しています.

Reference

  • Shuhei Ikemoto, Yuji Kayano and Koh Hosoda, "Active Behavior of Musculoskeletal Robot Arms driven by Pneumatic Artificial Muscles for Receiving Human’s Direct Teaching Effectively", IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, 2014.
  • Shuhei Ikemoto, Yoichi Nishigori and Koh Hosoda, "Direct Teaching Method for Musculoskeletal Robots driven by Pneumatic Artificial Muscles", IEEE International Conference on Robotics and Automation, 2012.

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