1996年3月14日
味細胞内pH変化によるウシガエル味覚応答の抑制
吉井 清哲
九州工業大学

 CO2やNH3は、ウナギ、アフリカツメガエルなどの水生動物味覚応答を抑制する。 CO2 やNH3は一般に細胞内pHを変化させるが、pH変化を引き起こすのに培養細 胞でも~10 秒を要する。一方、味覚応答に対する抑制効果は、~秒で定常状 態に達した。したがって、CO2やNH3が受容膜あるいは受容体に直接作用する可 能性が否定できなかった。今回、味細胞受容膜からCO2、基底膜からNH3をそれ ぞれ与えると、抑制の解除が起こることを確認した。これらの結果から、CO2 やNH3は、味細胞内pHを変えて応答を抑制すると結論した。また、味細胞受容 膜は、CO2やNH3に対し、透過性の高いことがわかった。

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1996年4月25日
論文紹介
 "Combinatorial optimization with use of guided evolutionary simulated annealing"
  Percy P.C. Yip, Yoh-Han Pao
  IEEE Transactions on Neural Networks, 6(2), 290 (1995)
  (guided evolutionary simulated anealing 法を用いた組合せ最適化)

岡本 正宏
九州工業大学

 いくつかの最適化手法を組み合わせて局所解に陥ることなく最小値(あるいは 最大値)を探索するやり方、すなわちハイブリッド型最適化手法に関する研究 が進められているが、この論文では、simulated evolution と simulated anealing を組み合わせたguided evolutionary simulated anealing 法の提案 とその有用性を論じている。 simulated evolution は、遺伝的アルゴリズム と類似した生物進化を模擬したアルゴリズムだが、その違いは、交差のような 2種間のかけあわせを行なわせず、無性生殖のように1つのseedを進化させる ものである。一方、simulated anealing 法は、別名、焼きなまし法とよばれ るもので、物質が一様な結晶構造を得る過程を最適手法にあてはめたものであ る。著者らは、このハイブリッド型最適化手法を考案し、組合せ最適化、さら には、数値最適化問題に適用し、その有用性を発表している。今回のセミナー では、その結果を紹介する。

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1996年5月16日
坂本 順司
九州工業大学

 電位依存性Caチャネルは、電気生理学的、薬理学的、分子生物学的に5ー6種 に分類される。この内、骨格筋のL型チャネル(クラスS)は最も早くにその実 体が確かめられ、大きい順にアルファ1、アルファ2、ベータ、ガンマ、デル タと名付けられた5つのサブユニットからなることが知られている。これは、 NaチャネルやKチャネルに比べ、複雑な構成である。そのうちアルファ1サブ ユニットは、Caイオンを通す穴を構成する主要なサブユニットであり、型(ク ラス)ごとに違っており、それぞれのcDNAがクローニングされている。しかし、 各型のチャネルのサブユニット構成は、十分には明らかにされていない。ここ では、2番目に大きいアルファ2サブユニットに着目し、これがクラスs以外 のチャネルにも共通に含まれているかどうかを系統的に調べた結果を紹介する。
 手段としては主に免疫沈降法を用いた。その抗体としては、脳の膜標品を抗源 としたモノクローナル抗体を、大腸菌に大量発現させた蛋白質に対する抗体な ど多種を用いた。

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1996年5月23日
海馬CA3神経回路網モデルの自発活動とその周期的シナプス刺激に対する応答
立野 勝巳
九州工業大学

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1996年5月30日
中川 秀樹
九州工業大学

 カエルが単純な視覚パターンを識別し、その行動発現をコントロールしている ことは、古くからの行動実験で明らかになっています。では、この異なる視覚 パターンを識別している時の脳の活動はどの様になっているのでしょうか?こ の問題にいずれは答えるべくCSD解析法を進めています。前回のセミナーで、 CSD解析法のカエル視蓋への適用の可能性についてお話しました。今回は、 初めての方のために、まず導入をかねて電気刺激に対する前回の解析結果につ いて、これまでの形態学的、生理学的知見と照らし合わせて詳細に議論します。
 続いて視蓋内導電率は一定であるというこれまでのCSD解析にもちいた仮定 の有効性を示すため、実測した視蓋内導電率による補正を行ったCSD解析の 結果とこれまでの非補正の結果を比較検討します。そして最後にカエルの網膜 神経節細胞の応答特性を利用して、異なるクラスの神経節細胞由来の神経活動 とその情報伝達経路を分離同定する試みについてお話したいと思います。

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1996年6月13日
中川 裕之
九州工業大学

 シナプス前終末には主にアクチン繊維から構成される細胞骨格が存在しますが、 その機能はシナプス小胞クラスターの形成に関与していることが分かっている に過ぎません。近年、アクチン細胞骨格は膜オルガネラの細胞内輸送に関与し ていることが明らかになってきました。したがって、シナプス前終末でのシナ プス小胞輸送にもアクチン細胞骨格が関与している可能性があります。そこで、 内分泌細胞由来のPC12細胞が未分化状態でもシナプス小胞に相同な分泌小胞を 持つことを利用して、シナプス小胞と細胞骨格との関連を間接蛍光抗体法によっ て調べています。まだ予備実験の段階ですが、これまでに得られた観察結果に ついてお話する予定です。

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1996年8月8日
中島 孔志
九州工業大学

 海馬スライスの活動を2次元的に測定するために開発中であるマルチ電極記録 装置についての状況報告ならびに関連した論文の紹介をさせていただきます.

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1996年9月19日
カルバコール誘導θ様リズムによる長期増強促進効果と抑制性神経
夏目 季代久
九州工業大学

 以前、モルモット海馬スライス標本においてカルバコール誘導θ様リズム中に シナプス長期増強が促進される結果を報告しましたが、今回は、その現象に対 する抑制性神経の関与について調べましたので報告します。

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1996年9月26日
Stochastic Resonanceに関するレビュー
林 初男
九州工業大学

 いくつかの安定な状態を持つ非線形系では、雑音の存在によって、むしろ、 S/N比が向上することがある。この現象は"Stochastic Resonance (SR)"と呼ば れており、我々の既成概念からすればパラドキシカルである。このような研究 は"なぜ氷河期がやってくるのか"という疑問に対するBenziら(1981)の答えに 始まった。まだ15年程度にしかならない発展途上の研究である。ニューロンシ ステムはbistabilityを持つ非線形系の代表例であり、1990年頃からニューロ ンシステムのSRの研究が増え、最近では、ニューロンシステムはSR研究の大き なターゲットの一つである。今回は、Stochastic Resonanceに関して簡単なレ ビューを行なう。

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1996年11月14日
Na/Ca交換機構による網膜水平細胞内のCaイオン濃度調節
林田 祐樹
九州工業大学

 神経細胞内でセカンドメッセンジャーとして重要な役割を持つ遊離カルシウム イオンの動態は極めて重要である.近年,Ca依存性蛍光物質の開発により (Grynkiewicz et al., 1985),神経細胞内遊離Caの動態に関する有用な情報 が得られてきた. 今回,水平細胞と呼ばれる網膜神経細胞の遊離Ca動態を蛍 光物質Fura-2を用い計測した.脊椎動物視覚系の2次ニューロンである網 膜水平細胞は網膜内で,暗い時に定常的な脱分極にあり光により過分極応答を する.つまり,光刺激のない時に持続的なCa電流が活性化されていることにな る.水平細胞の典型的なサイズから見積もると1pAのCa電流は1μM/se cのCa流入量に相当する.従ってこのCa流入と平衡して強力にCaを排出 する機構が必要と考えられる.一般的にCa排出機構として二つ,つまりNa/ Ca交換機構及びCaポンプが知られている(Dipolo&Beauge,1983; Blaustein,1988).最近これらのCa排出機構の存在が他の網膜神経細胞でも明 かにされつつある.そこで,中でも強力と考えられるNa/Ca交換機構の動態 を,Ca測光及びパッチクランプ法を適用し網膜内より単離した水平細胞にお いて解析した. 今回の研究によりNa/Ca交換機構が定常的な脱分極下の細 胞内遊離Ca濃度を約1μM以下の一定レベルに抑えることを明かにした.ま た水平細胞のNa/Ca交換機構による交換電流を分離し,心筋で得られた知見 通り(Kimura et al.,1986; Kimura et al.,1987),膜電位に依存した交換電流 が生じることが解った.

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1996年11月28日
脊椎動物視覚系における方向選択性ニューロンについて
古川 徹生
九州工業大学

 動物にとって視覚画像中の運動検出は,餌の捕獲,天敵からの逃避,移動中の 障害物の回避など生存していくうえで基本的な機能です.視覚画像中の動きの 方向に選択的に反応するニューロン(Directional selective neuron: DS neuron)は視覚系の中でも非常に早い段階から現れます.脊椎動物において, DSニューロンは網膜神経節細胞と大脳皮質の一次視覚野の2ヶ所で独立して 形成されます.網膜と大脳皮質のDSニューロンはそれぞれメカニズムも特性 もまったく異なっており,両者を比較しながら最近のDSニューロンに関する 研究を紹介していきたいと思います.

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1996年12月19日
マウス味蕾細胞の電気的性質に基づく味蕾内マッピングおよび電位依存性イオンチャネルの分布
古江 秀昌
九州工業大学

 化学受容細胞である味細胞は、環境面において極性を持つ。すなわち、味物質 が直接作用する受容膜上のイオン環境は著しく変化するが、味細胞間に形成さ れたタイトジャンクションにより保護された基底膜(受容膜以外の味細胞膜) 上のイオン環境は常に一定である。このような環境下で、味細胞は味物質の持 つ化学情報を電気的情報に変換する。また、味細胞は成熟に伴い味蕾(約50の 細胞から構成される味覚器)周辺部から中央部へと移動する。その寿命は約10 日である。 本研究では、新しく開発した剥離舌上皮内味蕾細胞測定システム を用い、味蕾細胞の電気的性質に基づく味蕾内マッピングおよび電位依存性イ オンチャネルの局在を調べた。
 味蕾細胞は脱分極によりTTX感受性Na電流、各種外向き電流を発生した。どの 種の電流を発生するかは細胞により異なっていた。味蕾内全域において、すべ ての細胞は外向き電流を発生した。しかし、TTX感受性Na流を発生しない細胞 が味蕾周辺部にのみ観測されたことから、味蕾内の位置により細胞の電気的性 質が異なることが示された。次に、受容膜および基底膜に各種イオンチャネル ブロッカーを独立に与え、その抑制の有無から電位依存性イオンチャネルの局 在を調べた。電位依存性Na電流、各種外向きK電流は、それぞれ1uM TTX、10 mM TEA + 10 mM 4APを基底膜に与えることにより抑制された。しかし、受容膜 に各種ブロッカーを与えても抑制は生じなかったことから、これらのイオンチャ ネルのほとんどはイオン環境一定の基底膜上に局在することがわかった。電位 依存性Kチャネルのほとんどが受容膜に局在する両生類味細胞とチャネルの局 在が異なることが示された。

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1997年1月23日
Extensive Integration Fields of Striate Cortex Neurons of Cat
Dr. Chao-Yi Li
Shanghai Institute of Physiology, Chinese Academy of Sciences, Shanghai, China

 The extensive field beyond the classical receptive field (CRF) of visual cortex neurons, although alone seems unresponsive to visual stimuli, may modulate the cell's response. We referred to this broad field as the Integration Field (IF). This modulatory effect can be facilitatory or inhibitory. The IFs are also selective to stimulus parameters, as is seen for CRF. For most cells, the orientation, spatial frequency and speed selectivities of the IF were similar to, but broader than, the tuning of CRF. The similarities of tuning properties and the interactions, between IF and CRF, enable cortical neurons to integrate texture features, and to detect various textural contrasts over an extensive area. We have analyzed the nature of IFs for a long train of cells, recorded along the electrode paths. Facilitatory and inhibitory IF neurons were found to grouped separately in a mosaic pattern in the striate cortex. For some functionally identified facilitatory and inhibitory IF neurons, the dendritic morphology of the two types of neurons was investigated using an intracellular staining technique (biocytin).

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1997年1月30日
NOとトポロジカルマッピング
安井 湘三
九州工業大学

資料: (1) Nitric oxide in cortical map formation,
B.Krekelberg and J.G.Taylor
Journal of Chemical Neuroanatomy 10:191-196,1996
(2) その他
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