2013年7月18日(木) (会場 2F 講義室2)
 ランダムなパルス列を用いた情報処理について
~電気受容細胞や味蕾細胞や海馬を横目にみながら~

○立野 勝巳

九州工業大学大学院 生命体工学研究科 脳情報専攻

 電気受容器を持つ魚や昆虫の神経系において雑音を巧みに利用する仕組みが報告されている。ガウス雑音ではなく、ランダムなパルス列でも非線形振動子が同期する現象などが報告されている。感覚系から中枢神経系にかけて活動電位により情報が運ばれる。活動電位は中枢神経系ではランダムなパルス列にみえるが、それらのランダムなパルス列が担う役割について工学的な応用につなげる立場から考えてみたい。例として、マウス味蕾細胞の構造にヒントを得たセンサーシステムと海馬神経回路網にヒントを得たフィルタ回路について紹介する。

 2013年5月31日(金) (会場 6F 脳情報専攻セミナー室)
成熟ラット網膜ガングリオン細胞に対するドーパミン効果

○緒方 元気1,2,3、Andrew T. Ishida1,4

1Department of Neurobiology, Physiology, and Behavior University of California, Davis、  2.新潟大学 研究推進機構 超域学術院、3.新潟大学 医学部 分子生理学教室、 4Department of Ophthalmology and Vision Science University of California, Davis

ドーパミンは、基底核、海馬、大脳新皮質において、活動電位の発生やシグナル伝達等を調節することが知られている伝達物質である。網膜において、ドーパミンは最初に特定された伝達物質であり、視物質の発現、桿体からのグルタミン酸放出量の調節、ギャップジャンクションコンダクタンスの低下、樹状突起・軸索末端の形態変化など、多彩な生理現象を誘引する。様々な異なった光の環境下〜例えば昼間と夜間の状態〜に順応できる網膜において、光刺激により放出されるドーパミンの重要な生理現象は、明るい環境下での光感受性を制御し、その機能を最適化(明順応)することである。
今回のセミナーでは、主に成熟ラット網膜から単離・培養した網膜ガングリオン細胞(Retinal Ganglion cell : RGC)におけるドーパミン受容体の活性化機構を、ホールセルパッチクランプ法により電気生理学的に解析した以下の結果について発表する予定である。(1)ドーパミンは、D1受容体を活性化し、電位依存性Na+チャネルの電流透過度を減少させることによりRGCの活動電位を抑制することを見出した。(2)さらに、ドーパミン、または光の刺激が、D1受容体のみならず別のドーパミン受容体(D2D5)を介して、RGCの活動電位を抑制していることを示した。また、(3)この現象のメカニズムとして、これらの受容体の活性化による細胞内Ca2+濃度の上昇が深く関わっていることを、Ca2+イメージング法により見出した。

これまで、ドーパミンは他細胞を介して間接的にRGCの活動電位を抑制すると考えられてきたが、今回の結果より、初めてドーパミンが直接的に成熟哺乳類のRGCドーパミン受容体を活性化し、活動電位を抑制することを示したものであり、明順応に不可欠な新しいシグナル経路と考えられる。


〔以上は、カリフォルニア大学デイビス校ポスドク時にAndrew ISHIDA教授のもとで行った研究結果です。〕



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