1. 生体の視覚系に学んだ組み込み視覚システム

[概要]

生体の網膜には外界の三次元構造を反映した二次元像が投影されます。視覚とは、眼底に投影された二次元網膜像から目の前の三次元世界を解釈する情報処理過程です。この意味で生体の視覚系は、外界の様子をきめ細かく、色再現性が高く切り出すことのできるデジタルカメラ等の撮像装置とは、目的が異なる情報処理装置であり、その設計原理も異なります。例えば国防高等研究計画局 (DARPA) によるロボットカーレース(DARPA グランド・チャレンジ) に参加した 自律型ロボットカーは約1kW のエネルギーが計算にかかることに比べて、ハチは数 10μW のエネルギーで視覚ナビゲーションを実現していると言われています(*)。本研究室では生体の視覚神経回路の計算原理や設計指針を手本とする研究を行います。

(*)Liu, S. C., & Delbruck, T. (2010). Neuromorphic sensory systems. Current opinion in neurobiology, 20(3), 288-295.

課題やキーワード:
FPGA によるイメージセンサ及び視覚情報処理モデル演算用回路の開発、生体視覚系の処理を規範とした処理機構の提案、生体視覚神経回路のニューラルイメージの再現、色恒常性、明るさ恒常性、順応機構 etc…


2. 生物の眼の動きを再現する眼球ロボットの開発

[概要]

生体は視覚情報で空間認知を行う際、その情報処理に神経系だけでなく積極的に眼球運動を活用していることが示唆されています。本研究では対象物を注視している際に生じる固視微動と呼ばれる微小な振動性の眼球運動に着目します。固視微動は視覚機能との関係性が活発に議論されており、例えば細かい形状の物体の認識課題で、神経系のハードウェア限界を超えるイメージング性能に寄与していると示唆されています。これはある時刻において外界を受光素子によって空間的に標本化した情報だけでなく、時空間的な情報を解析に利用しているためと考えられています。本研究では固視微動のための微動光学系を設計し、生体視覚系規範型フレームレスカメラと組み合わせることで、眼-視覚系規範型ロボットビジョンを構築します。構築したロボットビジョンにより、固視微動と情報処理機構を協働させることにより、注視中の対象物の空間解像度の向上や両眼装置により奥行き精度の向上が望めるかを検証します。


3. イベント駆動型センシング技術の開発とその応用

[概要]

生体模倣型視覚センサとして事象駆動型センサ(イベントベースドカメラ/Event Based Vision,イベント駆動カメラ)があります.特徴は高速,低遅延,高効率であり「動き」を捉えるセンサとして,産業応用が検討されています.本グループではイベントベースドカメラとスパイキングニューラルネットワーク(SNN)を組み合わせたイベント駆動型センシングシステムの構築とその応用に取り組んでいます.(prophesee/iniVation)

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