研究・ロボットデモ

高効率・高速処理を可能とする AIチップや次世代コンピューティングの技術開発を行い,その成果を競技会のFinalなどでのデモンストレーションを通じて発表しています.

脳型記憶モデル

海馬およびその周辺部位の機能から着想を得て設計した脳型記憶モデルの研究を行っています.ロボットが家庭内で経験し,獲得した固有の知識を元にロボットの行動生成を行うことを目指します.

RoboCup JapanOpen 2022 Final
〜負のエピソード記憶〜

負の経験を獲得しロボットの行動生成に活かすデモンストレーションを行いました.ロボットが故障した,障害物等に阻まれ移動できなくなったなど,ロボットがタスクの遂行に失敗した際に得られる経験を負の経験とします.一度経験したの負のエピソードを鮮明に記憶することで同じ失敗を繰り返さないようにすることを目指します.また,タスクの遂行に成功して得られる記憶は正の記憶として蓄積します.成功経験を何度も繰り返すことで正の記憶を獲得し,ルーチンワークのような行動を獲得することを目指します.

アナログチップと柔軟触覚センサ

アナログリザバーチップと柔軟触覚センサを組み合わせた,ロボットの認識システムの開発を行っています.対象物を傷つけず優しく把持することができる触覚センサ付きロボットハンドを利用し,ロボットの触覚情報を用いて物体認識に応用しています.触覚情報は時系列データとして高効率でかつ高速動作可能なリザバーチップで処理しています.ロボットの視覚機能を補うシステムへの応用が期待されています.

研究成果はロボカップのFinalやOpen Challengeで発表しています.

RoboCup 2021 Online

RoboCup JapanOpen 2020 OPL Final

関連論文・発表

  • 徳野 将士,田中 悠一朗,川節 拓実,細田 耕,田向 権, “柔軟接触センサを搭載したロボットハンドを用いたアクティブセンシングによる物体認識,” 第39回日本ロボット学会学術講演会(RSJ),2H4-02,2021年9月8-11日(10),オンライン.
  • Shoshi Tokuno, Yuichiro Tanaka, Takumi Kawasetsu, Koh Hosoda, and Hakaru Tamukoh, “Object Recognition by a Robot Hand Mounting Flexible Tactile Sensor,” 8th International Symposium on Applied Engineering and Science (SAES2020), C000275, Online, December 12-19 (16), 2020.
  • Issei Uchino, Shoshi Tokuno, Yuichiro Tanaka, and Hakaru Tamukoh, “Analysis of Tactile Information Acquired by a Flexible Sensor,” 8th International Symposium on Applied Engineering and Science (SAES2020), C000302, Online, December 12-19 (14), 2020.
  • Shoshi Tokuno, Yuichiro Tanaka, Takumi Kawasetsu, Koh Hosoda, and Hakaru Tamukoh, “Object Recognition Using Flexible Tactile Sensor,” Asia Pacific Conference on Robot IoT System Development and Platform 2020 (APRIS2020), Online, November 9-15 (9), 2020.
  • 徳野 将士,田中 悠一朗,川節 拓実,細田 耕,田向 権, “柔軟触覚センサを搭載したロボットハンドによる触覚情報からの物体認識,” 第38回日本ロボット学会学術講演会(RSJ),3E1-04,2020年10月9-11日(11),オンライン.

海馬・扁桃体・前頭前野の統合モデル

海馬,扁桃体,前頭前野に着目し,これらの機能を統合した脳型人工知能モデルの研究を行っています.

扁桃体モデルは古典的条件付けにより,入力情報の価値を判断します.海馬は「いつ」「どこで」「なにが」起こったのかというエピソード記憶を処理します.前頭前野モデルは時系列データを処理し,イベントの予測を行います.これらの機能を統合することで,家庭固有の知識を獲得する脳型人工知能を構築することを目指しています.

RoboCup JapanOpen 2019 DSPL Final
〜ウェイターの移動経路の予測〜

統合モデルを用いて,ウェイターの経路予測を行うデモンストレーションを行いました.ウェイターごとに異なる,すれ違い方のクセを学習し,スムースにすれ違いを行うための効率の良い経路を出力します.扁桃体モデルは入力として与えられた視覚情報の価値判断,海馬モデルは場所情報の処理,前頭前野モデルは移動経路の予測に使用されています.

成果: DSPL優勝

RoboCup JapanOpen2020 S-OPL Technical Challenge
〜ドアの開閉状況を学習〜

統合モデルを用いて,ドアの開閉状況を学習し,ロボットの移動経路を生成するデモンストレーションを,HSRシミュレータを用いて行いました.ある部屋のドアの開閉状況を数回の経験から学習し,効率の良い経路を出力します.海馬モデルはロボットの座標をもとに,ロボット自身の場所情報を表現します.学習時,扁桃体モデルは海馬モデルから受け取った場所の情動価値を学習し,前頭前野モデルは場所の時系列データである経路を学習します.実行時,前頭前野モデルが場所の時系列(経路)を想起し,扁桃体モデルはそれぞれの場所の情動価値を計算します.

ロボットがドアが閉まっていて通れないという状況を経験すると負の価値を学習し,与えられた場所の価値を順に判断し経路の価値を評価,相対的に価値が高い経路を選択して移動するデモンストレーションを行いました.センサから得られるその場限りの情報ではなく,ロボットがこれまでの経験から蓄積した,家庭ごとに異なる個別の知識を利用して効率的な経路生成に活かします.

関連論文・発表

  • Akinobu Mizutani, Yuichiro Tanaka, Hakaru Tamukoh, Yuichi Katori, Katsumi Tateno, Takashi Morie, “Brain-inspired neural network navigation system with hippocampus, prefrontal cortex, and amygdala functions,” 2021 International Symposium on Intelligent Signal Processing and Communication Systems (ISPACS 2021), BS-06, Online, November 16-19 (17), 2021.Best student paper award
  • 田中 悠一朗,田向 権,立野 勝巳,香取 勇一,森江 隆, “海馬・扁桃体・前頭前野の機能を統合した脳型人工知能モデル,” 第29回日本神経回路学会全国大会(JNNS2019),O3-41,pp. 28-29,2019年9月4-6日(5),東京,東京工業大学.
  • Yuichiro Tanaka, Hakaru Tamukoh, Katsumi Tateno, Yuichi Katori, and Takashi Morie, “A brain-inspired artificial intelligence model of hippocampus, amygdala, and prefrontal cortex on home service robots,” 2020 International Symposium on Nonlinear Theory and Its Applications (NOLTA2020), pp. 138-141, Virtual, November 16-19 (16), 2020. NOLTA2020 Student Paper Award

扁桃体モデル

World Robot Challenge 2018 (Real Space) Final
~あれとってきて~

扁桃体は情動に関わっています.古典的条件付けにより刺激(入力)の価値を学ぶモデルを使い,家族の好みを学習し,「あれとってきて」といわれると,家族が好むオブジェクトを持ってくる脳型モデルを搭載したロボットによるデモンストレーションを行いました.

RoboCup 2017 Final

成果: DSPL準優勝

関連論文・発表

  • Yuichiro Tanaka, Takashi Morie, Hakaru Tamukoh, “An amygdala-inspired classical conditioning model on FPGA for home service robots,” IEEE Access, Vol. 8, pp. 212066-212078, November 2020.
  • Yuichiro Tanaka and Hakaru Tamukoh, “Hardware implementation of brain-inspired amygdala model,” IEEE International Symposium on Circuit and Systems (ISCAS2019), Paper ID 2254, Sapporo, Japan, May 26-29 (28), 2019.
  • Yuichiro Tanaka and Hakaru Tamukoh, “Live demonstration: Hardware implementation of brain-inspired amygdala model,” IEEE International Symposium on Circuit and Systems (ISCAS2019), Paper ID 2351, Sapporo, Japan, May 26-29 (27), 2019.
  • Yuichiro Tanaka, Hakaru Tamukoh, “Application of digital hardware of deep self-organizing map network,” Asia Pacific Conference on Robot IoT System Development and Platform 2018 (APRIS2018), 7, Phucket, Thailand, October 30 – November 2(30), 2018.
  • Yuichiro Tanaka and Hakaru Tamukoh, “Hardware implementation of deep self-organizing map networks,” 26th International Conference on Artificial Neural Networks (ICANN2017), Lecture Notes in Computer Science, Vol. 10613, pp. 439-441, Alghero, Sep. 11-14(12), 2017.
  • Yuichiro Tanaka and Hakaru Tamukoh, “Hardware-oriented algorithm for deep neural networks composed of self-organizing maps,” Smart Info-Media Systems in Asia (SISA2016), 2016.
  • 田中 悠一朗,田向 権, “ヒューマンロボットインタラクションを通じて人の好みを学習する扁桃体モデルの実装,” 第36回日本ロボット学会学術講演会(RSJ),3D2-06,2018年9月4-7日(7),愛知,中部大学春日井キャンパス.
  • 田中 悠一朗,田向 権, “Deep Self-Organizing Map NetworksのFPGA実装,” 第27回日本神経回路学会全国大会(JNNS2017),P-76,p. 98,2017年9月20-22日(21),福岡,北九州国際会議場.
  • 田中 悠一朗田向 権, “自己組織化マップによって構成されるディープニューラルネットワークのハードウェア化,” 電子情報通信学会スマートインフォメディアシステム研究会(SIS), SIS2016-60, pp. 101-106, 2017年3月2-3日(3),神奈川,神奈川工科大学アクティブ・ラーニング横浜 .
  • 田中 悠一朗田向 権, “自己組織化マップを応用したDeep Neural Networkのハードウェア指向アルゴリズム,” 電子情報通信学会2016年総合大会 ISS特別企画「学生ポスターセッション」, ISS-SP-167, 2016年3月15-16(16)日, 福岡,九州大学伊都キャンパス.