テクニカルセミナー

免疫組織化学の実践的知識:より高い解像度を得るための工夫

福田 孝一(九州大学大学院・医学研究院・神経形態学)

 近年形態学以外の研究室でも免疫組織化学染色が盛んに行われるようになりました。 おそらくその背景には、さまざまな分野の研究者にとって、問題としている物質がどの ような細胞にあり、あるいは細胞内のどのコンパートメントに局在しているか、さらに また、その局在様式は生体の動的な営みに対応して、ダイナミックにどう変化するかと いう問いかけが、日常的に重要なテーマとなってきたという事情が考えられます。一方、 技術面においても、感度と特異性が高い染色方法の開発や、共焦点レーザー顕微鏡に代 表される、質的に高い画像をしかも容易にデジタル情報として記録できる方法の進歩が、 免疫組織化学染色の普及に大きな役割を果たしているものと思われます。
ところで免疫組織化学染色の原理自体は比較的簡単なものといえますが、先にふれた 目的意識の元に、高い解像度のデータを得ようとすると、やはりそれなりに色々な注意 が必要になります。今回のテクニカルセミナーでは、免疫組織化学染色の実際的な方法 について、主に次の観点からお話しするつもりです。
(1)「良好な固定がすべてに先立つ」
(2)「どう切るか - - - 切片作成法の比較」
(3)「抗体反応を行う際のさまざまなノウハウ」
(4)「いかにして共焦点レーザー顕微鏡の能力を最大限に引きだすか」
(5)「アナログで見る、デジタルで解析する (かたちを見ることと情報を得ること)」
これらのうちいくつか、皆さんの参考になることがあれば幸いです。