一般講演4
ラット大脳皮質第一次体性感覚野バレル皮質におけるin vivo patch clamp記録法を用いたシナプス応答の解析
○水野雅晴、土井篤*、八坂敏一*、古江秀昌*、粟生修司、吉村恵*
九州工業大学・生命体工学・脳情報
*九州大学・医学研究院・統合生理学
【目的】末梢からの触・痛覚情報は、視床を介して大脳皮質へ伝えられる。末梢への触・痛覚刺激に対する第一次体性感覚野神経細胞のシナプス応答の詳細な解析を目的に、鬢毛からの感覚入力を受ける皮質細胞からin vivo patch clamp 記録を行ない、鬢毛の触覚刺激および視床電気刺激によって誘起されるシナプス応答を記録解析した。【方法】In vivo 条件下でblind patch clamp法を、第一次体性感覚野バレル皮質に適用し、鬢毛からの入力を受けるIV層の細胞から電位および電流固定下で記録を行なった。オスSDラット(P21-28)を用い、ウレタン(1.2g/kg,
ip)によって麻酔した。鬢毛への感覚刺激はブラシを用いて加えた。視床VPM核は同芯円双極電極を用いて電気刺激した。記録した細胞の形態観察は、電極内から注入した0.2%
neurobiotinを用いて行なった。【結果と考察】皮質IV層の細胞から保持電位-70mVで記録を行なうと、自発性の興奮制シナプス後電流(EPSC)が観察され、反対側の鬢毛へ触刺激を加えると、このEPSCの振幅と発生頻度が著明に増大した。また周期的なバースト状のEPSC(オシレーション)を示す細胞もみられた。このオシレーションは、CNQX(100?M)を皮質表面に潅流投与すると抑制された。また、中継核の視床VPM核を単発電気刺激することによっても消失した。これらのことより記録細胞に観察されたオシレーションはEPSCを構成成分とし、視床活動由来であることが示唆された。一方、視床へ比較的弱い電気刺激を与えた場合、皮質の記録細胞では短い潜時(約2ms)と長い潜時(約120ms)のEPSCが誘発された。この皮質細胞は視床より単シナプス性および多シナプス性の入力を受けていることが示唆された。