テクニカルセミナー

中枢神経組織におけるプロテインキナーゼ・ホスファターゼ活性の測定

笠原 二郎(東北大学・大学院薬学研究科・薬理学分野)

 細胞内情報伝達経路の研究において、タンパク質リン酸化・脱リン酸化酵素の機能評価は重要な要素の一つである。これらの酵素の関与を検討する上で最も容易な実験は、ある機能評価系において、酵素阻害剤によって結果がどのように変化するのかを検討することであろう。事実、脳研究においても、数多くの酵素阻害剤が用いられ、様々な系において様々な酵素の関与が指摘されている。
 しかしながら、細胞内酵素に対して阻害剤を用いる際は、その特異性を十分に検討する必要があり、特に細胞内酵素を阻害するために高濃度の阻害剤を長時間生体試料に適用するような場合、目的以外の酵素や膜機能への影響に注意が必要である。従って、より精度の高い検討を加えるには、阻害したい酵素やそれ以外の酵素等の活性を、より直接的な方法で検討することが必要となる。
 本セミナーにおいては、タンパク質リン酸化・脱リン酸化酵素の活性評価方法について、そのいくつかの例を紹介する。

(1)SDSポリアクリルアミド電気泳動法を利用する方法
   (a) 抗リン酸化抗体を用いた免疫ブロット法
   (b) 32Pリン酸化ラベル法
   (c) ゲル内リン酸化法

(2)ホスホセルロースペーパーを用いた測定方法
   (a) 抽出液を直接用いる場合
   (b) 免疫沈降法との組み合わせ

(3)脱リン酸化酵素の活性評価方法