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ノイズを利用した新しい情報処理とそれを実現する
それを実現するナノ構造の提案およびCMOS回路の設計
参考文献

自己組織化ナノディスクアレイ構造を用いたニューロンデバイスの開発(2009-)

東北大学・寒川教授グループと,元・奈良先端科学技術大学院大学・山下一郎教授が協力して開発した ナノディスクアレイ作製技術 を用いて,スパイキングニューロンデバイス(積分発火型)を開発しています。
ナノディスクアレイ(NDA)構造(シナプス部として動作)をMOSトランジスタのゲート (ニューロンの樹状突起として動作)に接続することにより, スパイク入力によりシナプス後電位(PSP)を生成するスパイキングニューロンデバイスを 構成することを考えています。

NDA構造を構造シミュレータによりキャパシタ結合による等価回路に変換し, 単電子回路シミュレーションにより,電子伝導特性の振る舞いなどを調べています。

回路シミュレーション結果から,NDA構造によりPSP生成が可能であること, NDA構造上に付加した制御電極への印加電圧によりPSPの振幅を調整可能であること, ナノディスク間の電子ホッピングのゆらぎにより,PSPの立ち上がりにゆらぎ(ノイズ)を加えることが できること,等を見いだしています。

実際のデバイスとしては,低ゲート容量を実現するために, 最新の微細MOSFET構造(FinFET)を産総研の協力を得て作製し, その上にNDA構造を形成することに成功しました。

試作したデバイスで3入力の積和演算機能を確認しました。 [Tohara et al., APEX 2016]

本研究は, 『科学研究費・基盤研究(A) 「シリコンナノディスクアレイ構造を用いた知能情報処理デバイス・回路の開発」 (研究代表:森江隆)(FY2010-2013)』 と,それに引き続く 『科学研究費・基盤研究(A) 「超並列アナログ脳型LSIに向けたナノ構造メモリ素子とその集積回路化の研究」 (研究代表:森江 隆)(FY2015-2018)』 で実施されている内容です。

(最終更新日:2016/06/18)


確率的連想処理とクラスタリングへの応用(1997-2003)

ノイズを利用した新しい情報処理として,「確率的連想処理」を提案し,類似 したパターンを次々に連想するシステムを提案しました。また,この処理原理 をベクトル量子化の学習(クラスタリング)に適用し,従来の学習法に比べて はるかに効率的な処理を実現できることを示しました。
この情報処理原理は単電子トランジスタ回路での量子力学的な確率動作に基づ いて考案されたものです。

確率的連想処理(SA)の概念とアーキテクチャ

SA法のクラスタリングへの応用

SA法によるクラスタリングの例(最大エントロピー法との比較)。 SA法の方が四角の枠内にデータがきれいに分布しているのが分かります。

SA法と他のクラスタリング法との性能比較。縦軸は平均歪みを表し,小さい方 が性能が良いことを示しています。

熱雑音駆動原理による多重ナノドット構造の室温動作

確率的連想処理アーキテクチャを,動作揺らぎのあるナノ構造ビット(パター ン)比較器(BC)とキャパシタの組み合わせで実現する構成を考え,ゲート電 極上に多重ナノドット構造を有するMOSFETでBCを実現することを提案しました。 これは,ナノドット間のクーロン反発力を利用し,熱雑音駆動(確率共鳴)原 理により室温動作を可能とするデバイスです。

ナノ構造BCを用いた確率的連想処理アーキテクチャ

ナノ構造BCデバイスとその動作原理

ナノ構造を用いた確率的連想システムのイメージ図(左下図のように 複数のドットに渡って電極配線を行う冗長構成も可能)

確率的単電子連想システムのためのCMOSエミュレータ

確率的連想処理を実行するCMOSチップを設計・試作し,動作を確認しました。 確率処理は任意カオス生成回路による擬似乱数発生を利用して実現しました。

回路構成

チップ写真

測定結果。数字文字で連想を行わせた結果です。

  • さらに,クラスタリング(ベクトル量子化の学習)を行うチップも 設計し,機能を確認しました。

    チップ写真(右上部分)

    多重ナノドット構造によるスパイキングニューロンモデルの実現

    スパイキングニューロンモデルの中でもよく用いられる積分発火型ニューロン モデルでは,スパイク入力を受けた後,内部電位が上昇し,その後減衰する 「後シナプス電位」が重要な役割を果たします。これを多重ナノドット回路・ 構造における確率的動作の平均値として実現することを提案しています。この 構造が実現すれば,数100入力のスパイキングニューロンが1個のMOSトランジ スタで実現できます。

    本研究は 科学技術振興事業団・戦略的基礎研究推進事業(CREST) 「量子効果等の物理現象」・「三次元集積量子構造の形成と知能情報処理への応用」 (研究代表:廣瀬全孝教授)(1997-2001) による成果です。

    (最終更新日:2011/09/20)

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