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ニューロンのスパイク発火タイミングによる情報処理モデルとそのLSI化
参考文献

スパイキングニューロンモデル

従来のニューラルネットワークモデルでは,ニューロンの平均発 火率に基づくアナログ的な入出力を用いていましたが,近年, 入出力のスパイクパルスの タイミングを重視したモデル研究が活発になっています。このようなモデルで どのような情報処理ができるかを研究し,またそれを集積回路化して実用的な システムを構築するための研究を行っています。

スパイクタイミングに基づくモデルとして,積分発火型ニューロンモデル (Integrate-and-fire (IF) neuron model)がよく知られています。これはス パイクパルス入力があると後シナプス電位(Post-Synaptic Potential, 興奮 性EPSPと抑制性IPSPがある)がニューロン内に発生し,それらの時空間的な総 和としてニューロンの内部電位が表されるというものです。内部電位が発火し きい値を越えるとニューロンはスパイクパルスを出力し,その後一定の不応期 に入ります。

通常のIFニューロンモデルでは,しきい値を越えないとスパイク発火が 起こらないので,ほとんど発火しないニューロンも出てきてしまいます(下図 (a))。しかし,スパイクタイミングで情報を表そうとすると,スパイクがで てくれないと困ります。そこで,グローバル興奮ニューロンユニット(GEU) という素子を考え,いずれかのニューロンで最初にスパイクが発火すると, GEUが一定の興奮を全ニューロンに与えるモデルを考えました。こ れは,全ニューロンの発火しきい値を一律に一定量低下させることと等価です。 GEUにより,すべてのニューロンが発火できるようになります(下図(b))。

スパイキングニューロン回路

考案したモデルに基づいてCMOS回路を設計し,連想メモリを実現する相 互対称結合型ネットワーク(Hopfield型ネットワーク)を構成しました。これ に簡単なパターン認識を行わせました。高速回路シミュレーション(HSIM)に より,ネットワーク動作を調べたところ,GEUを導入することにより,入力パ ターンに最も近い記憶パターンに対応したタイミングですべてのニューロンが 発火することを確認しました。

スパイキングニューロン回路構成

スパイキングニューロン回路のシミュレーション結果

スパイクタイミング依存シナプス可塑性(STDP)を組み込んだニューロン回路

ニューロン同士を結合するシナプス部では,入力されるスパイクと発火 スパイクとの時間的関係でシナプス荷重が変化するSTDPを呼ばれる学習 ルールが知られており,神経科学の分野で活発に研究されています。
STDPにはスパイクの時間関係に対して,対称的なものと非対称なものが よく知られています。

対称・非対称STDPを実現するCMOS回路を考案し,回路化しました。

対称STDP回路のスパイク入力順検出部。

対称STDP回路の荷重更新部。

非対称STDP回路の荷重更新部。

STDP回路を組み込んだスパイキングニューラルネットワーク回路での パターン銘記(学習)と連想処理(回路シミュレーション結果)。

評価用STDP・ニューロン回路のレイアウト結果。

STDPシナプス回路を組み込んだスパイキングニューラルネットワーク LSIを開発しました。

スパイキングニューラルネットワークLSIの測定系。

STDP機能の測定結果。

開発したLSIで連想記憶機能を確認しました。

(最終更新日:2009/03/25)

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