九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 人間機能代行システム研究室

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シドニー通信 2008年9月7日  和田親宗

ここシドニーでは、非英語圏外国人向けの、英語教育のシステム化がなされているように思います。日本で見かける会話中心の英語学校も有りますが、大きなものとしてはTAFEやUTS INSEARCHがあります。TAFEは国が運営している英語学校、INSEARCHはUTSが経営している英語学校です。どちらも英語教育がベースで良い成績を取ると大学に編入することができます。ただ、職業訓練コースのあるTAFEはどちらかというと一般人向けで、一方、INSEARCHはUTSが経営していますので、大学に入学したい学生向けとなります。

オーストラリアの大学では、入学するためにある一定レベルの英語力が要求されます。英語学校の指定コースで良い成績を取って編入する方法もありますが、IELTSと呼ばれる英語テストの成績で英語能力の証明をすることもできます。このIELTSはTOEFLのようなもので、英国のケンブリッジ大学が作っており英国とつながりのある国で採用されています。成績は、Reading、Listening、Writing、Speakingと総合評価の5項目に対するスコア(0~9、0.5刻み)で表されます。必要とされるスコアが大学によって異なり、例えばある学部では6.5以上が必要、となるわけです。IELTS試験は毎週おこなわれており、入学願書提出までに必要なスコアを獲得しないといけないことになります。

8月4日から9月5日までの5週間、SupervisorであるNguyen教授の許可を得て、このIELTSコースに通いました。コースは月曜から金曜日までの週5日、朝8時半から1時までの約4時間、計100時間です。もちろん無料ではなく、総額約20万円です。合計で考えると高額ですが、時間あたりで考えると、一時間2000円です。日本の英会話学校の安価なコース程度だと思います。この金額はINSEARCHのコース全て同じで、General Englishという英会話学習が主体のコースでも同じです。個人的にはこのGEコースに通いSpeakingを何とかしたかったのですが、教授の許可が得られませんでしたのでIELTSになったわけです。学生は、17名で、ほとんどは大学入学や永住あるいは就労ビザ取得のためにIELTSのスコアアップを目的に来ていました。残り数名は、私のように全般的な英語力アップを目的にした者です。出身は、中国、韓国、台湾、ロシア、サウジアラビア、コロンビアなど様々でした。授業は、一日を前半と後半に分け、ある日の前半はReading、後半はListeningというような調子で進められました。先生は比較的ゆっくりしかもはっきり話してくださるのですが、わかない部分も少なからずあり、全てが英語というのはとても疲れるものです。この5週間は、午前中はINSEARCH、2時頃からUTSという生活で、当然仕事は平日だけでは片付きませんので、土日に片付けるという生活をしていました。

たった5週間ですから、英語能力が向上したとは思えませんが、授業で得たことを少し紹介しましょう。まず、SpeakingとWritingの授業でくどいくらい言われたのは、CoherenceとCohesionです。特に、Writing時には注意されました。辞書で確認して欲しいのですが、Coherenceとは首尾一貫性、Cohesionは語の結びつき、というような意味です。どちらも論理的思考を表現するために必要なことです。具体的には、Coherenceとは最初から最後までストーリーがつながっていて主張が明確になっているようなことを意味します。Cohesionとは、Coherenceを実現するために、例えば段落と段落をつなぐ接続詞が正しく使われていることを表します。これは英語だけでなく日本語にも当てはまることで、わかりやすい論文や文章はこの二つの条件を満たしています。私に文章を直された学生はわかると思いますが、「前後がつながらない」「なぜ、この部分で『そこで』を使っているのか」「結局、何を言いたいのか」などがCoherenceとCohesionに相当すると考えてもらって結構かと思います。この二つのことを常に意識しながら文章を書くようにして欲しいと思います。国語の成績が良い人は、CoherenceとCohesionが無意識のうちにできているように思います。と言うのは、私は小さい頃、あまり本を読まなかったため、国語の成績が悪く、今になっても論理的な文章を的確に書くことができないでいます。国語力は本をどれだけ読んだかに依存するような気がします。学生諸君には、今からでも、良い文章を多く読んで国語力を高めてもらいたいと思います。そうすれば、論理的な文章、CoherenceとCohesionを満足する文章、わかりやすい文章、を書くことができるようになると思います。

次におもしろいと思ったことは、IELTSのSpeakingテストの内容です。Speakingのテストは三つのTaskから構成されており、Task 1では受験者を落ち着かせることを目的に、自己紹介を含む日常生活に関する内容を試験官に質問されます。Task 3はTask 2の内容について聞かれます。おもしろいのはTask 2です。ここでは、ある課題(例えば、最近見聞きした興味深いニュースを説明し、なぜそれに興味を惹かれたのか、それに対してどう思ったのか)が印刷されている書類を見せられ、一分間で構成を考え、二分間で話す、というものです。課題にはいろいろなバリエーションがあり、例えば、推薦したい観光地、紹介したい伝統文化、などがあり、どれが出てくるかわかりません。ですので、日頃からいろいろな情報を仕入れておき、それに対して自分がどう思うのか、を考えておく必要があります。日本語でもかなり難しい課題だと思います。でも、自分の意見を話すという点では、よい訓練になるのではないかと思いました。言うまでもありませんが、英語がすぐには出てこない私にはとてもつらい時間でした。

さて、次は、最近見たアニメーションの話をしましょう。どうでもいい話ですので、この段落は読み飛ばしてもらっても構いません。イタリアでの映画祭の影響かどうかはわかりませんが、シドニーでは、この二週続けて、宮崎駿のアニメがテレビで放映されました。一週目はナウシカ、二週目はラピュタです。どちらも英語吹き替え版で、ディズニーが配給したもののようです。ナウシカは、日本語のものに、吹き替え者名などの英文を付け加えており、急いで作りましたという感じのものです。ラピュタは、日本語が全て消され、英文のみになっており、BGMも日本語版とは異なるものが使われていました。吹き替えの声ですが、ナウシカ、バズ-、シータについては、いずれも少し年上の同性の声優さんがおこなっていました。日本の場合、男の子の声や女の子の声は、年配の女性がまねるように声を作る場合が多いのですが、アメリカではそうではないようです。ですので、私のよく知っているキャラクタイメージとは異なり、違和感がありました。BGMも含めて、個人的には日本版のほうがいいです。他のキャストについては、許容範囲です。間違い探しではありませんが、違いを探しながら見るのもおもしろいものです。今週は、魔女の宅急便を放送するようです。知っている内容ですから、英語がわからなくても何とかなりますので、楽しみにしています。

最後に、8月30日(土)にInfo dayというイベントが行われました。日本のオープンキャンパスのようなものだと思います。UTSの各学部がブースを出して説明したり、模擬講義をしたり、というものです。学生だけではなく、子供連れも多く来ており、一種のお祭りのような印象を受けました。来場者数もはんぱではなく、一日中大学が賑わっていました。生命体のオープンキャンパスにもこれほど多くの来場者があれば、と願わずにはおれません。

UTS Info day (Aug 30, 2008)

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