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分野横断的サブプロジェクトの編成と研究活動
[ ネットワーク型化学センサの構築とデバイス化 ]
サブプロジェクトリーダー:吉井
味蕾型化学センサ サブプロジェクト
動物の優れた味覚は、舌や喉などに分布する多数の味蕾によって生み出される。一個の味蕾は50μm程度の蕾型で、〜50個の味蕾細胞と少数の味神経で構成される。味蕾細胞は、味物質センサとして機能するU型細胞、脳に味情報を出力するV型細胞などに分化している。近年、これら味蕾細胞と味神経は微小な脳のような細胞ネットワークを形成し、味情報を生成することがわかってきた。U型細胞群も、V型細胞群も、共にその生理学的特性は不均一であるが、ネットワークを形成することで優れた機能を発揮する。このネットワーク機構を工学応用するため、私たち、生理学、理論、ハードウエアの専門家は、学際的に連携し(図1)、プロジェクトを推進してきた(図2-5)。以下に,その成果の一部を紹介する。
図2 味蕾細胞ネットワーク
甘味、うま味、苦味味物質を受容したU型細胞(中央)は、細胞内の情報処理経路を活性化し、最終的に活動電位を発生してATPを放出する。放出されたATPは、パラクリン経路で、V型細胞(右)のP2X2, P2Y1受容体を刺激し、V型細胞から5HTを放出させ、化学シナプスを経由して味神経(右端)へ味情報を送る。
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図3 ソフトウエアモデル
提案モデルは、味蕾の構造や応答特性から得た“閃き”を基に創出したセンサ情報処理システムである。二種の味蕾細胞が味物質の検出に関与すること、味蕾細胞間に信号伝達の可能性があること、味蕾細胞の応答特性が均一ではないことなどを参考にしている。具体的には化学物質の濃度を、神経細胞モデルのランダムなパルス列に変換(ランダムパルス生成部)し、そのランダムな神経パルス列を活用して神経活動の同期(神経発火同期部)を促す。結果的に、化学物質の濃度を神経発火の同期の程度として符号化する。
図4 味蕾型化学センサアレイシステム
味蕾の特徴から着想を得た味蕾型化学センサアレイのリアルタイムシステム(右)を製作した。このシステムは、ソフトウェアとアレイ化した市販のアルコールセンサ(左)を用いて実現した。アルコール気体に対して、味蕾型化学センサアレイはリアルタイムに応答し、その出力の内容がディスプレイに表示される。アルコール気体濃度が高いほど、V型細胞2個のバーストの同期の程度は高くなる。したがって、味蕾型化学センサアレイは、アルコール気体の濃度をバーストの同期の程度として出力する。
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図5 味蕾型化学センサアレイの集積回路化
味蕾型化学センサアレイの確率的同期機構 [3] を実現するスパイキングニューロン回路[5]。格子状に配置した回路に共通入力としてランダムパルス列を与えると、回路間に結合がなく素子ばらつきのある場合でも確率的に同期することをモデルグループと連携することにより示した[6]。また,生理学グループと連携して拡散抵抗(細胞間のギャップジャンクションに対応)で回路間を接続すると、結合強度に応じて確率的同期特性が変化することにより素子ばらつきの影響が軽減されることを示した[7]。上記の特性は味蕾型化学センサアレイを工学的に実現するだけではなく,生理学的知見(味蕾におけるギャップジャンクションや確率的細胞間伝達特性)が集積回路実装上の問題(有限個の素子数,統計的分布、確率的動作etc)を解決するために有用であることを示すものである.なお提案回路は,九州地区ナノテクノロジー拠点ネットワークの支援を受けてシステム実装に向けて独自集積化プロセスにより試作を進めている。
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文献
[1] K. Eguchi, Y. Ohtubo, K. Yoshii, Functional expression of m3, a muscarinic acetylcholine receptor subtype, in taste bud cells of mouse fungiform papillae, Chem Senses 33, pp.47-55, 2008.
[2] R. Hayato, Y. Ohtubo, K. Yoshii, Functional expression of ionotropic purinergic receptors on mouse taste bud cells, J Physiol 584, pp.473-488, 2007.
[3] J. Igarashi, K. Tateno, K. Nakada, T. Miki, Y. Ohtubo, K. Yoshii, A chemical sensor array inspired by mouse taste buds, Abstracts of BrainIT2007, p.34, 2007.
[4] J. Igarashi, K. Tateno, K. Nakada, T. Miki, Y. Ohtubo, K. Yoshii,Demonstration of a chemical sensor array inspired by mouse taste buds,Abstracts of BrainIT2007, p.70, 2007.
[5] K. Nakada, T. Asai, H. Hayashi, Analog VLSI implementation of resonate-and-fire neuron, Int. J. Neural Systems, Vol. 16, No.1, pp. 445-456, 2006.
[6] K. Nakada, K. Tateno, H. Hayashi, K. Yoshii, Functional properties of resonate-and-fire neuron circuit for bio-inspired chemical sensor array, presented at BrainIT 2007.
[7] K. Nakada, T. Asai, J. Igarashi, H. Hayashi, Y. Ohtubo, T. Miki, and K. Yoshii, Stochastic synchronization and array-enhanced coherence resonance in a bio-inspired chemical sensor array, submitted.
[8] Y. Ohtubo, T. Suemitsu, S. Shiobara, T. Matsumoto, T. Kumazawa, K. Yoshii, Optical recordings of taste responses from fungiform papillae of mouse in situ. J Physiol 530, pp.287-293, 2001.
[9] K. Tateno, K. Yoshii, Y. Ohtubo, T. Miki, A network model toward a taste bud inspired sensor, International Congress Series, Vol.1301, pp.52-55, 2007.
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