九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻

知能創発ナノシステム研究室

H. Tanaka Laboratory · Kyushu Institute of Technology · Research News

Lead — マテリアル知能

乱雑さが、計算になる。
ナノ材料が「考える」まで

整った回路ではなく、でたらめに絡まったカーボンナノチューブの網。田中啓文教授の研究室は、その「ばらつき」と「ゆらぎ」こそが脳型の情報処理を生むと考え、材料そのものに計算をさせるインマテリアル演算を追い続けている。

知能創発ナノシステム研究室のイメージ
知能創発ナノシステム研究室。ナノ材料の科学から、脳型のAIハードウェアまでを一続きに扱う。

物質をとことん小さくしていくと、物の性質は変わる。ナノスケールでは、設計者が排除したがるばらつきやゆらぎが、かえって豊かな非線形の応答を生む。知能創発ナノシステム研究室は、この予想外のふるまいを欠陥ではなく資源として扱い、材料自身が知能を持つ「マテリアル知能」という現象を探っている。

転機のひとつが2018年だった。カーボンナノチューブとポリオキソメタレート分子を組み合わせた複合ネットワークが、神経細胞のスパイク発火によく似たインパルス状の信号を自発的に生み出すことを確かめ、成果は英科学誌 Nature Communications に掲載された。ナノ材料で脳機能の一部を再現した、という報告である。

そこから研究は、信号を「出す」段階から「使う」段階へ進む。2022年には、単層カーボンナノチューブとポルフィリン-ポリオキソメタレート複合体によるリザバー演算素子をロボットハンドに実装し、物をつかんだときの触感信号から、何をつかんだのかを判別してみせた。大阪大学、UCLA、そして学内の田向権教授との共同研究による成果である。

材料開発からロボティクスまでを一貫してつなぐ。
いま向き合っているのは、デバイスを実際のAIロボットへ渡す「死の谷」だ。 研究の現在地

田中啓文教授談

田中教授は、九州工業大学ニューロモルフィックAIハードウェア研究センターのセンター長も務める。同センターが掲げるのは、脳の挙動をベースにこれまでを「超越」したAIシステムをつくること。国際シンポジウムの開催や海外大学との往来を通じて、材料・デバイス・ロボティクスの研究者が同じ机につく場をつくり続けている。

扱う材料も広がった。グラフェンナノリボン、銀微粒子やAg2Seのランダムネットワーク、高配向性の半導体ポリマー薄膜、カーボンナノチューブのスポンジ構造によるインセンサ演算素子。共通するのは、きれいに整えるのではなく、乱雑さを設計する、という一貫した姿勢である。

Feature — 2022.07.07

タイ王国シリンドホーン王女より、名誉学位

田中教授がタイ王国スラナリー工科大学から名誉学位を授与され、シリンドホーン王女より学位記を受領した。同大学から日本人への授与は3人目となる。同年7月29日には日本経済新聞でも報じられた。

シリンドホーン王女とのフォトセッション
シリンドホーン王女とのフォトセッション。
シリンドホーン王女より学位記を受領する田中教授
王女より学位記を受領する田中教授。
スラナリー工科大学の名誉学位記
スラナリー工科大学より贈られた名誉学位記。

主なできごと

Milestones

ナノ材料で、神経様スパイク発火を再現

カーボンナノチューブとポリオキソメタレート分子の複合ネットワークが、神経細胞のスパイク発火に似たインパルス信号を生むことを確認。大阪大学・北海道大学との共同研究。

Nature Communications / 九工大プレスリリース

AIロボットが、つかんだ物を言い当てる

マテリアルベースのリザバー演算素子を開発し、ロボットアームの触感信号から把持物体を判別。九工大・大阪大学・UCLA の共同発表としてJSTより公表された。

Advanced Intelligent Systems / JST 共同発表

五機関との共同研究が Small 誌に

北海道大学、京都大学、産業技術総合研究所、大阪公立大学、ルーベン大学との共同研究論文が Small 誌に採択された。

Small

JST戦略的創造研究推進事業 ALCA-Next に採択

田中教授が代表として提案した研究課題が、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業 ALCA-Next に採択された。

科学技術振興機構(JST)/ALCA-Next

日印二国間共同研究が採択

日本学術振興会(JSPS)のインドとの二国間共同研究事業に採択。国際共同研究の枠組みがさらに広がった。

日本学術振興会(JSPS)

CNTスポンジのインセンサ演算素子、バックカバーに

カーボンナノチューブのスポンジ構造を用いたインセンサ演算素子に関する論文が Advanced Intelligent Systems 誌に掲載され、バックカバーに選ばれた。

Advanced Intelligent Systems

受賞

Awards
E-MRS 2026 で最優秀ポスター賞を受賞したメンバー
欧州最大級の国際会議 E-MRS 2026 にて、山下さんが最優秀ポスター賞を受賞。
E-MRS 2026 で若手研究者賞を受賞した Harshita Rai さん
共同研究者の Harshita Rai さんが若手研究者賞を受賞。
第6回ニューロモルフィックAIハードウェア国際シンポジウムでの受賞
第6回ニューロモルフィックAIハードウェア国際シンポジウムで、田端さんが最優秀講演賞、フィンさんが優秀講演賞を受賞。

山下さんが E-MRS 2026 最優秀ポスター賞、Harshita Rai さんが若手研究者賞を受賞。

田端さんが修士論文発表会 最優秀講演賞を受賞。

タンさんが Nano Thailand 2025 優秀講演賞を受賞。

君塚さんが NOLTA 2025 最優秀論文賞を受賞。

第6回ニューロモルフィックAIハードウェア国際シンポジウムで、田端さんが最優秀講演賞、フィンさんが優秀講演賞を受賞。

徐助教がニューロモルフィックAIハードウェア研究センター助教に昇任。田中悠一朗センター助教は准教授に昇任(同年4月)。

宇佐美助教らの Advanced Materials掲載論文が、応用物理学会論文賞を受賞。

君塚さんが応用物理学会2023年秋季講演会で講演奨励賞を受賞。

ニューロモルフィックAIハードウェア研究センター

ニューロモルフィックAIハードウェア研究センター

脳の挙動をベースに、これまでを「超越」したAIシステムをつくることを掲げる九州工業大学の研究センター。田中教授がセンター長を務める。

  • 第8回 ニューロモルフィックAIハードウェア国際シンポジウム
  • Neumorph セミナーを開催
  • 天津大学の教職員・学生がセンターを再訪
  • 第7回 ニューロモルフィックAIハードウェア国際シンポジウム
  • Materials Meet Robots 2025

研究室来訪者

Visitors