現在、人工知能(AI)が社会の隅々まで浸透しようとしており、人類は自らの文明を計算システムと情報ネットワークに大きく委ねようとしています。ところが、デジタル演算を行う現在の計算システムは、本質的に多くの計算資源とエネルギーを必要とし、自然と調和的ではありません。AIを脳と同等の速度で働かせるためには莫大な計算資源を必要とし、実に人間の脳の消費エネルギーの百万倍ものエネルギーが必要となり、たちまち電力枯渇の問題にさらされるでしょう。例えば自動ロボットが充電のために頻繁に充電ブースに戻ったり、巨大な電池を積み込んで動き回り、それにより電力消費量が増えたりするような状況で、人類はAIロボットから十分な恩恵が受けられるでしょうか?
いま真に求められているのは、社会が環境に対する柔軟性や適応性を高め、自然との新たな調和を実現するための計算システムです。人類は自然の力を巧みに活用して環境への負荷を低減しながらも、高い生産性や生活水準を保ちつつ生き永らえねばならないのです。われわれは、新しい世界観に基づく自然調和型の計算パラダイムを打ち立てねばなりません。この人類の喫緊の課題に対し、本センターでは、物質が有する潜在的な演算能力「マテリアル知能」を活用した「ニューロモルフィックAIハードウェア」を研究の中心テーマとします。それと並行して、材料開発からロボティクスまで一貫したAIハードウェア研究を行い、脳型AIシステムを具現化し、次世代の産業に貢献することを目指します。同時に、我々が開発したハードウェアを積んだロボットがいたるところで働いている未来を夢見ています。